公立図書館の公共性
本(商品)を税金で共有してよいのは、それが公共の福祉だという共通認識があるからだろう。
その認識がなければ商品を税金で買い、勝手にシェアすることは端的に言って営業妨害だろう。
公共の福祉がそれに勝るという理解がなければ許されないことであるから、本というのは特殊な地位を占めている商品なのだと思う。
昭和25年当時の資料から公共性について、文部省社会教育局長の言葉をみてみる。
p.98-100
6 公立図書館の公共性
図書館は、その定義においても明らかなように、一般公衆の利用に供されることが目的であるから、公立図書館であると、私立図書館であるとを問わず、その公共性が重視されねばらなないことは勿論である。然し住民の税金によって設置運営される公立図書館においては、私立図書館における場合よりも一層その公共性が強調されるべきであり、文字通り住民全部の世論によって、住民全部のために活動しなければならないのである。従って図書館奉仕の理想も特に公立図書館において重視されてくるのである。
公立図書館の公共性を考える上において注目すべき規定を二つ図書館法の中に指摘することができる。一つは公立図書館の無料公開の原則である。
旧図書館令においては、
第13条 公立図書館ニ於テハ閲覧料又ハ附帯施設ノ使用料ヲ徴収スルコトヲ得
という規定があって、公立図書館においても、入館料その他の使用料を徴収する例になっていた。然しこのことは、さきに昭和21年3月ジョージ・ロ・ストダード博士を団長とする米国教育使節団の報告書の中においても鋭く批判され、公立図書館は無料公開を原則とすべきで、公費によってすべて賄われなければならないとされたのである。公立図書館が真に住民全部のためのものであり、利用しようとする人に常に公開さるべきものであるためには、この報告書をまつまでもなく、無料公開にさるべきは当然である。図書館法においては、この原則をかかげて、
第17条 公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
としたのである。
<略>
第二は、図書館協議会の制度が、図書館法ではじめてとりあげられたことである。
第14条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。
2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。
公立図書館に図書館協議会の置かれる理由は、第14条第2項のその職務によっても明らかなように、住民の具体的な図書館に対する要望なり意見なりを、図書館奉仕を実施する責任者とも言うべき館長に対して反映せしめるために置かれるのである。わが国の図書館活動の歴史に置いてかかる機関が置かれることになったのは、まさにはじめてのことである。然し図書館協議会も真に置くべき必要のある図書館に置かれるべきで、画一的に小さな図書館にまで置くことを法律的に義務づけることは、かえって望ましくないことであろう。この点公民館に置かれる公民館運営審議会といささか趣を異にすると言える。然し構想としては、いずれも、住民の世論を尊重して館の運営なり活動なりをやってゆこうとするものである。
西崎恵『図書館法』社団法人 日本図書館協会, 1970年