アート・オブ・プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントの「技術」の本なんだけど、テクニカルに解決するにはプロジェクトというものは一般化された事象としては捉えがたく、都度状況を見極めなければならないという点でナマモノであり、アートである。

私自身は管理する側にはないけれど、どういったマネジメントの下ならやりやすいだろうというのはよく考える。一つの結論としては、ちゃんと言葉を尽くすということだろう。明示し、対話する。明示されなくとも、黙っていても分かるといった空気が流れ出すと少しずつ道が逸れていく。

特にプロジェクトの背景や意義、大切にしている価値などを共有するよう努めないと、たんなる労働力の集合に堕してしまい、各所で局所最適化が起こってしまい、総合力としてのパフォーマンスが出なくなってしまう。作業単位が個人に紐付き、チームとしての結束や協力がなくなり、ルーチンをこなすだけのラインになってしまう。

この本は、そうならないよう、いかに言葉を尽くし対話を重ねるかを丁寧に示している。読み終わってみて、マニュアル的な対処ではなく全人格を睹して事にあたらないとマネージなんてできないのだなと痛感。まあ人と人との交わりの上に成果物が出来上がるのだから当然だ。ただ根性論ではなく実際の経験から得られた教訓が随所に収められているため、読者は足りない経験を補うことができるし、その途上にある者の行先を照らしてくれもする心強い内容でもある。

Amazon.co.jp: アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE): Scott Berkun, 村上 雅章: 本