図書館が無料であることについて

無料の経緯について西崎局長は、前回整理した以外にも次のように述べている。

「先般米国の教育使節団等が参りましたときのアドヴァイスにも、この図書館の公共性と公開性を非常に強調致しまして、いかなる対価をも徴収すべきではないということが書いてあるのであります。実は私たちが立案に当たりました際にも、十七条に但し書きをつけまして、もしも事情やむを得ないものがあるときには、監督官庁の認可を受けてとってもいいとして、当分、救ったらどうかという意見もあったのでありますが、非常にこの線は関係当局の強い線でありますので、ここに原則を明らかにいたしたのであります」(1)

ここで「関係当局」とは総司令部民間情報教育局のこと。
つまり政府としては対価を徴収できる可能性を残しておこうと考えていたが「当局」の強い意向により無料になったということであり、これについては「日本の図書館界が大きな努力を払った形跡がない」(2)ということのようだ。

ところで博物館も「対価を徴収してはならない」のだが、博物館法には「但し博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる」と但し書きが付いている。結果、多くの博物館は有料になっている。
西崎局長のいう「但し書き」もこれが念頭にあったと思われるが、現状の博物館を考えると図書館の無料の原則については当局の意向が強く働いたことが大きく影響しているといえる。

有料制については受益者負担の考え方があるが、図書館によってもたらされる便益は図書館利用者に限らないとする指摘(「当該サービスが純粋公共財ではなく私的財(ないしは準公共財)であることが受益者負担の前提である」(3))もある。

参考:

  • (1) 森耕一『図書館法を読む』社団法人 日本図書館協会, 1990年 p.158
  • (2) 塩見昇、山口源治郎 編『新図書館法と現代の図書館』日本図書館協会, 2009年 p.187
  • (3) 田村俊作・小川俊彦 編『公共図書館の論点整理』図書館の現場(7), 勁草書房, 2008年 p.77
  • 森耕一『近代図書館の歩み』至誠堂, 1986年