図書館法の「レクリエーション」について

西崎恵『図書館法』は、昭和25年当時、文部省社会教育局長だった西崎恵氏が図書館法の趣旨を述べた資料。

「レクリエーション」の定義

 図書館法による図書館の目的と、従来の目的とを比較すると、レクリエーションに資するということが新たに加えられている。これは図書館の新しい傾向として単にわが国のみ限った現象ではない。国民の図書館に対する要望が、学術研究とか教養とか言ったものよりもっと寛いだもっとやわらかい楽しみを含んできたためで、これに応ずるために、図書館はレクリエーションの面を加えてきたのである。所謂レクリエーション・センターの傾向がこれである。これは後に述べるインフォメーション・センターとしての機能とともに最近の図書館の活動が重視してくるようになったものである。この傾向が定義中にも現れてきたわけであるが、具体的には第三条の、美術品、レコード、フィルムを収集したり、鑑賞会、映写会を主催したりするところに表現されているのである。
 レクリエーションという言葉は最近非常に使われるようになった言葉であるが、適当な娯楽、スポーツ等を楽しみ、平易で高尚な音楽、芸術等を楽しんで、今日の疲労をいやして再び明日の人生を創造するという所に意味がある。したがって享楽とは異なることが注意されねばならないのである。レクリエーションは、どこまでも
 一 生活を向上せしめるものであること
 二 楽しいものであること
 三 誰でも参加できるものであること
 四 仕事の能率を高めるものであること
等の条件をみたすものでなくてはならないとされている。
西崎恵『図書館法』日本図書館協会, 1970年, p.49-50

図書館資料の収集の範囲も拡大されるのは当然である

…図書館がレクリエーション・センターとしての機能を持つようになってきた結果、この機能に応じて、図書館資料の収集の範囲も拡大されるのは当然である。ここで美術品と言っておるのは、芸術鑑賞とレクリエーションの対象となる絵画、彫刻等を指すのであって、将来図書館が美術品を揃えるようになると、美術界自体にとっても非常によい刺戟を与えるようになると思われる。レコード、フィルムを収集する傾向は諸外国にも強いのであって、レコードライブラリー、フィルムライブラリーと言った構想すら実現されている。レコードやフィルムは視聴覚教育の資料中の代表的なもので、その他に、幻灯、スライド、紙芝居、掛図等がある。視聴覚教育の資料は、単に文字だけを媒介とする場合よりも、より具体的に、より直接的に利用者に受けいれられるのであって、教養の向上やレクリエーションの活動には是非とも必要なものである。
西崎恵『図書館法』日本図書館協会, 1970年, p.66

図書を気楽な近づき易いものにするために

 これからの図書館は、分館、閲覧所、配本所等を設置したり、自動車文庫や貸出文庫を巡回することによって、その活動の範囲をひろげ、図書館の恩恵をできるだけ沢山の住民に与えて、文字通り住民全部の図書館とならなければならない。
 六、読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びその奨励を行うこと。
 これらの種々の集会を図書館自らが主催して行ったり、又他のものが主催する集会を奨励するために、図書館資料を貸したり、又部屋を貸してやったりするのである。図書館職員が中心となって、住民の間に読書グループや研究グループをつくって、図書資料を使っての読書会や、又色々な問題の研究会等は非常に大きな便益を住民に与えることができるであろう。鑑賞会、映写会というのは先にのべたレクリエーションのための会合であって、図書を気楽な近づき易いものにするためにも、今後いよいよ盛んにすべきである。資料展示会というのは、統計資料とか、珍しい図書館資料等を展示する会で、ぶらっと図書館に入っても、こういう展示会から多くのものが学べるようにしたい。
西崎恵『図書館法』日本図書館協会, 1970年, p.72