公共図書館の委託

最近は CCC とセットで言及される TRC こと図書館流通センターは、公共図書館からよく指定管理を受けていることでも知られている会社ではあるが、そもそもどういった組織なのか、ここでふりかえってみたい。

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 公共図書館の委託は、1980年代になって京都市長野市でカウンター業務を委託しようという動きがあった時からとされることが多い。しかし、あまり意識されてこなかったが図書館での委託業務そのものは第二次大戦直後から始まっている。それも日本図書館協会が受託先になって、選書、収集、目録作成という、それこそ根幹にあたる部分の業務を代行してきている。戦後の混乱期であり、図書館業務が分からない職員が多かったこと、そして出版・流通鵜事情が悪かったため集品もままならないというやむをえない事情があったにしても、委託業務であることには変わりはない。そしてこの委託業務に関しては図書館界が育ててきたものであることを忘れてはいけない。

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 1947(昭和22)年5月に発行された『図書館雑誌』に「カード斡旋配給」と「図書推薦事業」を始めたという報告が出ている(図書館雑誌[1947])。当時は紙が配給制であり、出版物がきちんと地方に届かない混乱の時代であったこと、そして図書整理のできる職員がいないといったことがあり、日本図書館協会に頼らざるを得ない事情もあったようで、その意味では地方の窮状を見かねて日本図書館協会が立ち上がったということであった。
 しかし、その後選定事業日本図書館協会の財政基盤を支える大きな柱になってくる。『図書館雑誌』第46巻第5号で「出来るだけ多くの図書館で選定図書の購入をするように努力する」(図書館雑誌[1952a:27])、あるいは1949(昭和24)年度の事業報告として「3 八千円文庫 年八千円供託することにより、小中学校別に推薦図書、その印刷カード、「読書相談」を自動的に配布する」とあり(図書館雑誌[1950:150])、さらに第46巻第7号では「選定図書直送の件」として、図書費を割いて選定図書を購入することを勧めている(図書館雑誌[1952b:53])。
田村俊作・小川俊彦 編『公共図書館の論点整理』図書館の現場(7), 勁草書房, 2008年

この事業を継ぐ形で誕生したのが TRC ということになる。