スマホに満足してますか?~ユーザインタフェースの心理学~

Amazon.co.jp: スマホに満足してますか?~ユーザインタフェースの心理学~ (光文社新書) 電子書籍: 増井 俊之: Kindleストア

人間の行動や人間が目にするものは繰り返しで満ちています。毎日同じような行動をしていると、今日の行動記録は「昨日と同じ」のように圧縮可能になってしまうので、歳をとるとだんだん時間がたつのが速く感じられてしまうのでしょう(「時間感覚のコントロール」参照)。繰り返しの少ない/圧縮しにくい人生を送るためにも、無駄な繰り返しを自動化するツールを活用したいものです。

繰り返しというのは情報量がなくなっていくということで(以下同)のように圧縮されてしまうことだとすると、人の行いもまた繰り返しであるとき、情報量がなくなってしまうのだろう。すると経験が増えることによりある体験が過去のどれかとマッチされ、次々と(以下同)が生まれてしまうのだろう。するとほとんどの体験が(以下同)で済んでしまい、あらたな情報として得られるものが少なくなってしまう。ということは物理的な時間は相当経過するとしても体験的には過去の繰り返しだと自覚されるため、情報処理の負荷が軽く時間が過ぎ去る感覚が早くなる、ということなのだろう。反対に子供は経験が浅いため体験が新鮮で都度処理すべき情報が膨大であるため、体感する時間も長いということなのか。

これを回避するため、大人は積極的に繰り返しの作業を自動化して新たな体験に割ける時間を捻出しようというのはとても前向きで良い考えだ。定型処理を自動化し創造的な時間を増やしましょう、と一言で済んでしまうけれど、時間の圧縮という考えはファイルの圧縮処理の言い換えとしても成立して面白い。

UIの使いやすさというのはある意味で繰り返しのしやすさという「馴染み」も一つにはあると思うけれど、悪しき繰り返しには迎合せず常に最適なUIを探し求めるために脳を駆使していくというのはとても真摯な態度だ。ある種突飛な発想のように感じるものもあるけれど、そういった驚きこそ時間の圧縮から逃れるために必要な体験であり、人生を「長く」するために有効なものだ。そうしたものを提供してもらえることに感謝しつつ、自身でも何かできないかなと考えている。