機械に勝てること

『もし顧客に、 彼らの望むものを聞いていたら、 彼らは「 もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう』(by ヘンリー・フォード) だが、労働力としての馬は車によって駆逐され、交通としての馬は完全に排除された。

馬が排除されたように、人のなす領域もまた機械によって駆逐されようとしている。しかし機械化に対し人間の肉体労働というのはわりと健闘している。非定型的な肉体労働を機械が代替するのはまだ難しい。機械化は情報の定型的な処理を中心に、いわゆるオフィスワーカーの中間的なスキルの労働者の作業を奪っている。

高度な作業と思われていた部分についてもパターン認識や記憶の集積といった部分は機械に分があり、人が単独で行うよりも機械と協業したほうがより正確で効率の良い仕事ができるようになってきている。医療や法律といった分野でも機械が専門職を補佐する場面が増えてきている。チェスも将棋も対戦ではなく人と組んで行われ始めている。

人の仕事は非定型的な肉体労働を伴うものと、高度な判断を必要とする専門職とに二極化し、機械はこれを補佐するものとしてその<職域>を広げている。中間的な仕事はほぼ完全に自動化・機械化される傾向にあるため、人はその両極のどちらかを目指さない限り、機械との競争にさらされることになる。