「無料貸本屋」と「民間委託」について、個人的な整理

Librahack, takeolibrary となぜか図書館に関係することに惹かれている。

素人なりに図書館にまつわる話を見聞きしてきたので、整理をしてみたい。
とくによく聞く話「無料貸本屋」と「民間委託」についてまとめる。
(間違っている点はご教示いただけると大変助かります)

無料貸本屋
 「図書館は無料の貸本屋とは違う」といった形で言及される。
 貸本屋は本を有料で貸すところで、昔の文脈には低俗(だが大衆受けは良い)というニュアンスもあったようだ。
 図書館はそういった「低俗な」本を市民の要求のままに貸出すようなところではない、という主張だと思う。
 では何なら貸してよいか・貸すべきなのかというのは意見が分かれている。
 貸本屋は「本を貸す店」で、図書館も同じ「本を貸す所(しかも無料)」でよいのかという問題提起であり、「貸出」をどのように位置づけるかという議論でもある。

「無料」
 図書館が無料なのは図書館法によって定められている(第十七条「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」)から。しかし図書館法は1950年に施行されたもので、それ以前には図書館令というものがあり、図書館令では閲覧料を徴収可能だった(第七条「公立図書館ニ於テハ図書閲覧料ヲ徴収スルコトヲ得」)。
 図書館法が従前によらず対価を徴収しないようになったのは、米国教育使節団からの指摘の影響もあるだろう(1)
 それまでの図書館が有償・閉架・貸出不可だった(2)のに対し、CIE図書館は無償で開架式だった(館外貸出もあった)。以後図書館はCIEと同じ方式で広まることになる。

貸本屋と図書館
 図書館が普及するまでは本を借りるところとして貸本屋が主流だった。やがて図書館の台頭により貸本屋と図書館は競合関係になった。競合のピークは1980年頃。図書館の発展により貸本屋が衰退しているとする主張もみられるようになった。1981年には全国貸本組合連合会が「図書館行政に対する陳情」を申し入れ、図書館と貸本屋の棲み分けや協力についての提案があった。一方図書館では「貸本屋の利用者は図書館に移行するか」論じられたりしていた。

民間委託
 「委託」については日本図書館協会自らが先鞭をつけており、自身が受託先になって選書、収集、目録作成を代行していた。1947年に「カード斡旋配給」「図書推薦事業」を始め、1949年に「八千円文庫」(年八千円供託することにより小中学校別に推薦図書、その印刷カード、「読書相談」を自動的に配布する)を開始するなど、協会にとって重要な財源であった。
 しかし1979年、協会は1億近い赤字を抱え、業務が破綻する。協会は出版社に協力をあおいでTRC(図書館流通センター)を発足させ、同社へ事業を借金込みで引き継いだ。
 協会による図書館業務の代行は、戦後の混乱期に図書館実務を支える人材不足等をきっかけにしてはいるものの、業務の代替可能性を自身自ら早々に示していたことになる。またこの「アウトソーシング」によるコスト削減効果は当初から認識されており、委託による「効果」も手本を示していたことになると言えると思う。

参考:
(1) 西崎恵『図書館法』社団法人 日本図書館協会, 1970年 p.98
 旧図書館令においては、
 第13条 公立図書館ニ於テハ閲覧料又ハ附帯施設ノ使用料ヲ徴収スルコトヲ得
という規定があって、公立図書館においても、入館料その他の使用料を徴収する例になっていた。然しこのことは、さきに昭和21年3月ジョージ・ロ・ストダード博士を団長とする米国教育使節団の報告書の中においても鋭く批判され、公立図書館は無料公開を原則とすべきで、公費によってすべて賄われなければならないとされたのである。公立図書館が真に住民全部のためのものであり、利用しようとする人に常に公開さるべきものであるためには、この報告書をまつまでもなく、無料公開にさるべきは当然である。

5/4 22時補足
(2) ただし当時の町村立図書館の多くは簡易図書館に分類され、館外貸出を主とし無料で利用できた。しかしこれは閲覧施設を備えない小規模な施設だからであり、その意味で料金を徴収するような図書館ではなかったから。

  • 田村俊作・小川俊彦 編『公共図書館の論点整理』図書館の現場(7), 勁草書房, 2008年
  • 岩猿敏生『日本図書館史概説』日外アソシエーツ株式会社, 2007年